スピーディー

Ugly duckling 「スパイク・レコード」
作:樋口美友喜/演出:池田祐佳理

@新宿タイニイアリス

 開演直後に、テーマの核心にあたるようなフレーズをいきなり投げつけられて、わからないながらも「ただごとじゃない何かが起きている」ドキドキ感だけで目を背けられなくなって、知らない間に物語のど真ん中へ放り出されていたことに気づいた瞬間とか。
 どうにも狭くて窮屈そうに見えていた舞台美術が「え、そこ開くの?」「そこスライド式なの?」「そこ文字書けるの?」と、いちいち叫びたくなるような劇的な動きを見せた瞬間とか。
 そういう瞬間は今までのアグリーにもあったことはあったものの、なにかが違って見えた今回。何がどう違うのかを説明できない自分の貧弱な語彙を恨みますが、地味にとっ散らかしているというか、見えないところで豪快にやってるなあという印象はあったりもして。たとえば『早着替え』とかそういうテクニカル視点に目を向けてみれば、ほとんど不可能としか思えない動きをしている役者が二三四五人。まあ、そんなところ見ているのは僕だけなのかもしれないですけど。