左しか向けない/ヨル、ホタル

 起きたら寝違えてた。
 僕は普段からよく寝違えるほうなのだけど、今朝のは特にひどい。ほんの少しでも右や上を向くと激痛が走り、やむをえず左下ばかり俯向いてばかり。でも、あんまりにも症状が重いので近所の整体院へ赴き、なんとかしてもらう。半年以上ぶりに行くその整体院は中国人整体師が一人で経営しており、治療中に痛みを訴えれば感情起伏ゼロの声でソーデスネーと返されるのと、ジャスミン茶を飲み終わるまで絶対に帰してくれないことさえ除けば腕は確か。
 どうにか我慢できる程度まで症状が緩和したところで、さて今日はとスケジュールを開けば『夜、蛍』と書いてある。ただの予定にしては驚くほど美しい文字列。
 で、そのメモに従い、夜、蛍細工の稽古場へお邪魔する。まだそんなに台本が上がってきてるわけでもない状況でお邪魔するのは本当にお邪魔以外の何者でもないのだろうけど、なにかと主宰とは打ち合わせなきゃいけないことが多くて、さらにはなぜか出演者の中に混じった別団体の主宰とも打ち合わせなきゃいけないことが多くて、危婦人とも並行してやらなきゃいけないことが多くて、行けるときに行っておくのが手だろうということで。
 しかしまあ、蛍細工の稽古は常時トランス寸前の空気に満ち満ちていました。オープニングシーンの概要を必死で役者に説明するクレハさんの立居振舞が意図せずしてチェルフィッチュめいていた*1のも面白かったけど、そんなクレハさん自ら「普通の子はいません」と断言するだけあって、どこからどうやって集めてきたんだと言いたくなる曲者揃いの役者陣。役を与えられる前の、素の状態からそれぞれに強烈なキャラクターが標準装備されている。なんとか打ち上げまでにこの曲者たちと対等に渡りあえる技術を身につけよう、という目標をひそかに立ててみる。

*1:説明だけなんだから座ればいいのに、と少し思ったけど、見てて楽しいので言わなかった。