エンディング・テーマ

properties2007-05-13


 むかしむかし、あるところに…で語り始めることができそうな浮世離れした劇場。駅徒歩3分の線路沿い立地なのに地元の人もあまり知らない隠れ芝居小屋。前日の夜から搬入が可能で寝泊まり可能、やろうと思えば徹夜設営や徹夜稽古もできるハコ。
 楽屋というよりは普通の木造一戸建てのような、二階。上演中は細心の注意で歩かないと、ギシギシと天井の軋みが客席まで響く。夜公演で静かなシーンなんかがあると、隣接するスナックの喧騒が遠慮なく芝居に割り込んでくる。どうしてここに?って場所にある水場。狭すぎる調光室。釘どころかビスまでも直打ち可能な壁面。寸法のあわない平台。脚立の安定しない凸凹の床。螺旋階段、靴箱、ゴンドラ。非日常の詰め合わせみたいな劇場。
 そこに僕が観客として行ったのは2回だけ、小屋入りしたのも3回だけ。普通なら特に思い入れも何も生まれそうにない回数ですが、その劇場はいつも住み慣れた我が家のように迎えてくれました。
 閉鎖の理由は建物の老朽化。人間でいうなら老衰、大往生。本当に、40年間お疲れ様でした。そこに立ち会っていただいた満場のお客様、ありがとうございました。なにか少しでもアルスノーヴァのことを記憶の片隅に残しておいてくだされば、こんな幸せなことはありません。