みつけてくれてありがとう

 でかい蜂がいるなと思って、首が取れるほど大きく上半身をスイングさせて避けたらトンボだった。スイングした拍子に背骨が木魚みたいな音で鳴った夏、まだ七月。
 みなさん夏バテなどしていませんか。僕の夏バテはまだ始まったばかりです。これから三連続の小道具仕事が待ち受けているので早めに何とかしなくてはならないと思いながらも、具体的な方策がなくて弱っています。さらに、今月に入ってからほとんど観劇できてないことが余計に疲労感を増幅させる。目的があって上京した者にとって、その目的に関係のない時間はすべて「何もしてない」に等しい(正確には「何もしてない」と周りから思われている、と必要以上に思い込んでしまう)ので、俗にいう「なにやってんだろあたし現象」に簡単に落ち込んでしまうのです。
 ただ、見に行けないかわりにというか何というか、近頃いろんな人と偶然会う。よく会う。道端で、電車で、信号待ちで。あと一分そこを通るのが早かったら/遅かったら、あと一本/一輌前の/後の電車に乗ってたら、あと一本手前の/奥の道を歩いていたら、なかったはずの偶然の出会い。
 大体こういう話は突き詰めると最後のほうには宗教じみてくるものと相場が決まっているのでこのへんで止めときますが、「劇場入りする出演者と偶然会った数時間後に、それを見にいく観客と偶然会う」なんていうダブル偶然を体験した今日くらいは、神妙な気持ちになったっていいじゃないか。偶然が人を救ったっていいじゃないか。