緑色の刺客

 9月のハイブリッド渾沌にて登場した埴輪で使用されていた『園芸用吸水スポンジ』。あのときの埴輪、大中小と三つ出てきましたが、僕が作ったのは大だけ(中身は厚紙と発泡スチロール)で、残り二つは役者の手によるものでした。中サイズのは実際に粘土から焼成(埴輪研修に行ったそうです)した本物ですが、最も小さい埴輪、『こんなのしか作れないようじゃまだまだ半人前』と怒られるシーンがあるくせに三つの中で最も見た目が良いという矛盾を抱えこんだ埴輪、あれに使われている素材がこの園芸スポンジなのです。稽古場でそれを触ったとき、こんなに応用の利く素材がまだ残っていたのかと我が目を疑い、我が見聞の狭さを呪ったものです。

 スポンジとはいうものの、いわゆる食器洗い用とかのそれとは違う感触で、発泡スチロールを少し柔らかくしたようなものを想像すれば近いかもしれません。もちろん加工は容易く、なんといってもそれが一番の利点なのですが、なにしろ指で軽く押すだけで簡単にへこむし(元には戻らない)、しかも粉がポロポロ落ちる。結局、手持ち道具には適さないという重大な欠陥をも併せ持つのです。ただ、上から塗料を厚塗りするとか、ボンドニス*1でコーティングするとか、そういった工夫次第でいくらでも問題は回避可能ですし、23cm×11cm×8cmサイズで100円というコストパフォーマンスや他の素材の追随を許さぬ加工の手軽さなど、かなり魅力的なメリットは欠点を補って余りあるものです。
 そういうわけで仕切り直し第一弾は世間の流行に周回遅れで乗っかってみました、『やわらか闘牛』。

 硬い角を持つ闘牛ですが、体がスポンジなので誰かを突き刺しても自分の頭に角がめり込んでいくだけという「哀愁の猛獣」がコンセプト。材料は園芸スポンジと骨付き肉に付いてた骨2本。材料費総額300円未満、製作時間10分未満。玄関に飾って魔除けにでも。

*1:表面を木工用ボンドで薄く覆い、ニスのような塗膜と光沢を手に入れる方法。石鹸で揉み洗いする要領で木工用ボンドを素材に塗りたくる。ただし手荒れ対策には万全の注意が必要。