カタルシスとクライシス

 小屋入り前日に38度9分の熱を出し、生まれて初めて点滴を受ける。難関だった小道具に光が見えたせいで気が緩んでしまったのか、しかし、よりによって、なんでこんなタイミングで。
 ただ、だからといって「小道具間に合わなかったんでマイムでお願いします」なんてわけにはいかない。こんなちっぽけな、吹けば飛ぶよな物でも必要なんです。その不可欠ぶりは台本に軽く目を通すだけでもすぐわかるし、何より、自分の小道具が出演している舞台(そう、出演なのです僕にしてみれば)を一度も見ずに終わるなんて事態だけは絶対に回避したい。意地でも本番までには完治させねばと、これまでの人生で一番真剣に休みを取り、初日の今朝みごとに完治。special thanks for 生姜湯。
 めまぐるしく変化しつづけていた演出は初日を迎えてついに固定されました(はず、です)。こんなに変えて平気なのかと途中二、三度思ったのも事実なら、あれだけ度重なる根底からの変更を受けてなお、よく見れば最初から全く動いていない中心軸の強靭さに驚いたのも事実。
 あとは僕と僕の小道具さえ失敗しなければ…いや、真のネックは「失敗しても失敗に見えない」ことなのかもしれません。誰の目にもそれとわかるミスじゃなく、「あれは、ああいうもんなんだ」と納得して帰られてしまうのが一番恐いし悔しい。とはいえ、いつまでも言ってても切りがないので腹は括ります。要は失敗しなけりゃいいのだ失敗しなけりゃ。