無農薬シンガー

Field Recordings

Field Recordings

 タイトルだとか、ジャケット写真だとか、鳥の鳴き声が入っているからだとか、そんな単純な理由だけじゃなく(さすがにそれだけのことで騙されるほど僕も馬鹿じゃないつもり)この人の声そのものに宿る「庭先感」というか「晴れ間感」というか、なんなんだろう本当に、たとえ消灯後の布団の中とかで聴いていても三半規管だけは日曜の朝の森の奥へと連れ去られて行ってしまうのです。インパクトが無いぶん耳触りだけはひたすら良くて、自分が能動的に何かを聴いていたことさえ忘れて生活音の一部に溶け込んでしまいそうになる。暑くもなく寒くもない、空腹でもなく満腹でもない、起きたばかりで眠くはないけどボーっとしていたい、そんなお誂え向きのコンディションでする散歩のような、数ヶ月フライング気味に耳だけ小春日和。