出られないEXIT

tsumazuki no ishi 「SHEEP FUCKER'S EXIT」
作:スエヒロケイスケ/演出:寺十吾

@下北沢ザ・スズナリ

 乾燥した冬の丑三刻、眠らない人たち。黒ずんだ切れかけの街灯の、蛍光灯特有の点灯までのタイムラグがあまりにも美しくて。
 異常な事態ばかりが立て続けに起こり、しかも、どいつもこいつも平然とした顔で異常しているもんだから、いつのまにか正常の定義を見失う。熱さをほとんど感じないうちに巨大な土鍋で煮詰められて知らず知らず脱水症状に陥ってました、みたいな感覚。
 演劇は映像で見ると面白さが最低でも3割は劣化する、というのが僕の長らくの持論でしたが、ちょっとだけ例外を許してもいいような気になりました。というか、これの映像版、見たいと思った。まぎれもなく演劇だった(演劇とはつまり、最前列で見てる観客に土煙とか空き缶が飛んでくる唯一のジャンルである)のだけど、映画(的な雰囲気をもったもの)としても同時に成立していたんじゃないかと思うのです。完全に直感で論拠も何も挙げようがないし、それが良いことか悪いことかさえ正直なところ僕には判断できないのだけど。