その名は喜劇

 何度か一緒にやっている劇団だと、だんだん小道具の傾向ってやつが分かってくる。といっても何が登場するかが前もって分かるわけではなく。いや、そうだったらどんなに良いか、とは考えます。大体のアタリをつけて小道具を作り終えてから稽古場に現れ、その場で脚本読みながら「じゃあ今回はこれとこれですね」とか言ってカバンからヒョイヒョイ取り出すのだ。そうだったらどんなに良いか。そうだったらどんなにチヤホヤされることか。それはもはや小道具さんではないし稽古場の借りてきた猫でもない。『22世紀の薄ら青い猫』だ。
 話を戻します。何度か一緒にやっている劇団だと、新たな小道具の登場するタイミングの傾向が、なんとなく掴めてくるのです。小出し小出しで増えていって最終的にすごい量になるとか、小屋入り前日になって一気に増えるとか、逆に作り終わってからばっさりカットになるとか、そういう傾向が。危婦人の傾向も毎度のことで、そろそろ何か増えるんだろうなあとか思いながら稽古場に顔を出せば、それを知ってたかのように増えている。あまりに見事に予感が的中したんで少し笑ってしまう。
 そして通し稽古。出演者の瞬発力と瞬発力がぶつかりあって脚本の上に面白さをベタ塗り、船頭多すぎて船エベレスト制覇というか何というか、「にぎやか」の部分については全くもって看板に偽りなし。それでいて「ちょっとビターなサザエさん」的側面もあり。