誰が為に鳴るあの警鐘を鳴らすのはあなた

北京蝶々 「あなたの部品 ファイナル」
作・演出:大塩哲史

早稲田大学大隈講堂裏劇研アトリエ

 星新一を一顧だにせず、吾妻ひでお入り口の西島大介経由で深堀骨円城塔に行き着いてしまった変則SF(Sugoku Fujouri)ファンの僕にとって、北京蝶々は唯一の正統派SF(Science Fiction)といえるのかもしれません。
 舞台は近未来。100年後の話より10年後の話をするほうが難しいわけで、なぜなら100年後よりも10年後のほうが観劇した人が生き続けている可能性が高く、10年後の世界から「ぜんぜん違うじゃん」というクレームが発生するおそれが多分にあるからで、だから近未来は厳密にはもう未来とはいえないのでしょう。気ままにポップコーン片手には見ていられない、スクリーンに隔てられずに目の前で起きている切迫した嘘八百の現在。
 あと、こういった政治的社会的問題を取り扱うときに重要なのは「そういうのに興味ない人の目をどうやって釘付けにするか」だと思うのですが、そこらへんの戦法の抜かりなさが見事に浮き彫りになった感じの作品。ふと視線をそらした拍子に見つけてしまった、ステージの真下に人柱のごとく積み重なる大量の手足に戦慄。