連続失笑犯の手口

鉄割アルバトロスケット 「大根+1」
戯作:戌井昭人/演出:牛嶋みさを

@原宿リトルモア地下

 まるで福引きでも当たったような本物の開演ベルが大音量で響きわたり、ゴザでできた即席緞帳が上がれば、色とりどりなのか間に合わせなのかさえ判別つかないツギハギ布張り舞台美術と、縁日屋台のような裸電球照明が顕現。原宿とかいうスタイリッシュな街の地下に、河川敷の地べたに引っくり返した焼そばみたいな泥臭さが充満し、演劇の体裁を借りて起き上がる立体的な町田康
 『ゴドーを待ちながらを、あんまりよく解ってないままやる』という目論見だそうですが、一番面白い部分である「人が無駄に時間を食い潰しながら何かを待つ」ところだけはキッチリ押さえてあるので、ゴドーが信楽さんだろうが場所が浅草だろうが、場所が浅草だということを唯一示す書き割りの一枚板ベニヤが途中で傾いで落っこちようが日本酒こぼそうが知らぬ存ぜぬ時間だけが過ぎてゆく。噂に聞いていた『役者が互いをネギの束で殴りあうだけのパフォーマンス』は見られなかったものの、大根で頭を殴るシーンがあまりにもさりげなく、殴られる側の痛みに見合わぬ地味さで挟み込んであったのが妙におかしくて後を引く。