ガソリンのまぼろし

錦鯉タッタ 「安穏。加害者と夫、その妻とその意志」
構成・演出:山田零

@神楽坂die pratze

 内容、だとか、必然性、だとか、それを理解できたかできなかったかで言えば、まず理解はできていません。ただし、その理解の防波堤を乗り越えてやって来た何か洪水的な感覚、については一滴残らず浴びたつもり。「まあ普通そうなるよね」という展開などなく、声嗄らした役者のためのブレイクタイムをも挟みながら、どこにも着地しないまま逆放物線描いて天上遥か飛んでゆくダイナミック・スイング。
 タバコにランタンにカセットコンロと、本火使いたい放題の演出で知らず知らず刷り込まれていたのかもしれませんが、どうみてもただの水だろうとか、本当にそんなことするはずがないだろうとか、いくら頭でわかったつもりでいても、それでも、床一面にぶちまけられた液体にライターでそっと火をつけようとしたあの瞬間に全身を恐怖と高揚が同時に駆け抜けた馬鹿正直な僕の体は確実に「演劇」を観ていたんだと思う。