食べられません食べれるまでは

汚れつちまつた流し台に、
今日も自炊のできかねる。
 年に一度くらいの周期でやってくる、台所が主戦場と化す特殊発注。「もう小道具の範疇じゃない」と巷でも噂の品物ですが、それを何度も作ってる僕は一体何道具なんだよ、と思う。そもそも「小道具の範疇」だけで済む仕事をした記憶がほとんどないのが問題だ。
 クロムのセールスポイントの一つでもある『良質にして過剰なスタッフワーク』の中に何食わぬ顔して紛れ込むため、油断すればどんどん剥げ落ちてく自分のメッキの脆さを補うべく必死で全身に金箔を塗り重ねる毎日(もちろん比喩ですよ)(そして笑うとこですよ)(金箔と緊迫で)。
 とある素材を湯煎でじっくり煮蕩かす。いろいろ試してみてますが国内製品と舶来製品とでは溶け方に微妙な差が出て興味ぶけえ。いい感じにグツグツしてきたら魔法の粉薬(きぎょうひみつ)を少しだけ加え、さらに混ぜます。こんなことをかれこれ5回は繰り返しており、当然ながらその出来栄えを確認するのも僕の仕事の一環なら、そのたび襲い掛かるこの胸焼けもやむをえぬ。