魔女の大鍋

ハイブリッド渾沌 「赤い褌」
作・演出:金子薫

@演劇フリースペース・サブテレニアン

 なにしろ旗揚げ公演(見に行けなかった)で、洋式便座トイレのことを『水源の椅子』なんて表現した金子さんだったから、今回の土臭いタイトルには多少なりとも驚きました。でもハイブリッド渾沌の「渾」にも通じる文字だったりもするせいか、不思議と違和感はない。この『違和感なく赤い褌って言えちゃう』点こそハイブリッドの強味ではないかと。
 上演時間108分の煩悩絵巻。たかだか2畳分のスペースで、総当たり戦かと思うほどの多種多様な組み合わせで混ぜ合わせられる高濃度劇薬ぞろいの8つの個性。劇薬と劇薬が反応しあって生まれるものは渾沌以外に呼びようがなく、すべての伏線と世界観を完全放棄して(一瞬とはいえ)とんでもない方向へ物語が丸く収束しかけて固唾を呑む。
 演出家と舞台監督(文字通り)をも兼任しながら、この世の炭水化物を喰らい尽くさんとする金子さんの怪演は当分の間頭から離れそうもありません。あんな堂々と存在する黒子は初めて見た。