チョップする者される者

 初日は満員でした。
 観劇とは客席の雰囲気込みでの行為だと分かっていても、今回のゲネプロと本番のギャップには説明できない謎の力が作用しているみたいです。ゲネと同じ台本とは思えないほど格段に見応えを増した演技の質と、ゲネではあんなに何事もなかったのに目には見えない「初日の魔物」が舞台狭しと吹き荒れた結果のポルターガイストみたいなトラブルの数々。
 隣にいる美術の袴田さんが舞台を見ながら何度も力なく笑うのをチラチラ横目で窺っていると、その姿はいつぞやの自分とオーバーラップするのでした。なにしろ何年もの確かなキャリアを持つ美術さんが「初めて見た」と言い切る現象ですもの、そりゃ泣くより怒るより先ずは笑えてくるのが正常な精神防御反応というもの。これだから演劇は何が起きるか分からない。明日からも、そう明日からも。