とりとめなど要らぬ

五反田団 「俺の宇宙船、」
作・演出:前田司郎

三鷹市芸術文化センター・星のホール

 普段全くといっていいほどに何一つ建て込まない五反田団ですが、劇場入り口を一歩入ると木造の宇宙船(のように見えなくもないパネルの裏側)がお出迎え。そして美術が、美術がすんごい。
 無限に広がる宇宙空間を表現したかのような美術でありながら、使える空間面積は逆に縮まっているという完全にパースの歪んだ世界で、小銭のやりとりや居酒屋店員研修や蟹とワインの話など、だらだらした小競り合いが無限に続き、無限に続いたまま誰かが(それは登場人物の誰かかもしれないし観ているこっちの頭かもしれない)狂ってしまって唐突に終わる。宇宙なんて所詮そんなもんでしょ、とでも言いたげなクールでドライな視線を、徹頭徹尾クールさもドライさもその片鱗すらも感じさせず*1演じきる前田イズム全開フルスロットル。
 江戸川乱歩を読みながら何か悪いもんでも食べたような米平少年の台詞回しの空回り感が素晴らしかった。並大抵の人間はあれほどまでには空回れないと思います。

*1:じゃあパワフルなのか、メロウなのかと聞かれれば絶対違いますと1秒以内で即答できる。