山頂からの歌

ナルペクト 「ラストナンバー2009」
脚本:鈴木しげき/演出:成島秀和(こゆび侍)

恵比寿エコー劇場

 成島秀和 in 吉本興業。この特異な組み合わせが以前からちょくちょく成立しているのは耳にしていたものの、なかなかこの目で確かめられないまま今日に至る。笑いが勝つか、ヒリヒリが勝つか。名勝負の予感。
 天才と馬鹿と自由と暴挙をもれなく履き違え、死ぬまで履き違え続けた男の不器用すぎるロックンロール都市伝説。そうやって真ん中にブレないストーリーの芯を一本通しておいて、その周囲を並み居る芸人たちと怪優たちが辺り構わず揺さぶり倒す。果てしないアドリブ合戦をやめるタイミングとか、そよ風のようにすり抜けた不発弾的なボケを拾い戻して再着火する手際とか、いちいち絶妙。
 そして、序盤から丹羽紋子さんに宿るナチュラルな狂気が炸裂。終始トリッキーな行動と言動でさんざん場を引っ掻き回しておきながら、終盤の真面目なシーンにさざ波ひとつ立てず紛れ込める空気感、あれが才能というものです。