よもやま経済

Rimini Protokoll 「カール・マルクス資本論、第一巻」
演出:Helgard Haug/Daniel Wetzel

@にしすがも創造舎

 前回のムネモパークがあまりにも面白かったので、俄然期待の高まる第二回来日公演。原作未読。原作?
 とりあえずドイツ語のヒアリングができないなら後方席が断然お勧めです。
 内容を理解しながら読むと1年はかかる『資本論』を今から120分で上演します、などと軽いジョークから始まり、プロの俳優が一切出てこない代わりに本物の教授やギャンブラーや詐欺師が続々登場。彼らの実体験にしか基づかないリアル資本論を淡々と展開したあげく、1冊1200円×3分冊の大月文庫版『資本論』を観客全員の手元に配布、ご丁寧に蛍光ペンが引かれた箇所の引用を踏まえつつ、クイズ番組のパロディーを経て客席を文字通り「煙に巻く」スモークマシン大噴射の末、『資本論の舞台化なんかできるわけないだろ!』と言わんばかりの、いや実際に字幕で言っちゃう壮大なノリツッコミ。
 前回もそうですが、演出家や俳優が稽古期間内でムリヤリ資本論を頭に叩き込むのではなく、もとから資本論を難なく読みこなせる人たちを集めてきたのが新鮮だし、内容に間違いがない。それでも俳優じゃない人たちからは否応なくリアルが滲み出るもので、ドイツ語/日本語/中国語と無差別ミックスでお送りしてきた舞台のラスト直前のハプニングに動転するあまり、全く何語にも翻訳できない「うはっつ」という小さな悲鳴をあげた萩原ヴァレントヴィッツ健さんに今一度盛大な拍手を。