エリザベスの不在

うさぎ庵 「7歳の孫にジンを2杯飲ませた祖母」
作・演出:工藤千夏

@アトリエ春風舎

 こんなタイトルをつけられて観に行かないほうがどうかしてると思う。海外で実際にあった事件(というほどでもない小事件)を元に骨組み肉付け脚色施した、静かな愛憎劇。
 登場人物には三人の女性がいるはずなのに演じる女優は二人。なので、祖母にしか見えない孫がいて、孫には見えない母がいて、観客にしか見えない孫(?)がいて、それぞれが信じている事件の全貌はパラレルワールドみたいに入り組んで。
 「見えてしまったものは真実でしかない」「舞台上にいない人は、いない」というシンプルなルールだけで、どんなに唐突に時間がジャンプしても話が追えなくなることはなく、むしろそのジャンプの飛距離の残酷さに鳥肌が立つ。真っ赤な表紙に真っ黒なページの絵本が印象的。
 アフタートーク、低姿勢で遠慮がちに遠回りしながら最終的に最も失礼な角度から直線で切り込んでゆく工藤千夏さんの話術に笑いながら舌を巻く。