モスクワ本町/あなた鬼ね

アイサツ 「桜の三人おじさん」
原作:アントン・チェーホフ/脚色・演出:尾倉ケント

@渋谷Gallery LE DECO 5

 裏付けも何もない印象論で勝手なこと言わせてもらいますが、古典戯曲と現代演劇の間にある溝ってのは結局「言文一致」だと思うのです。それは小説でいうそれとは少し違って、たとえば独白が多いとか相槌を打たないとか常にフルネームで呼びあうとかいった細部の話。つまり「文章では書くけど口頭でこんなこと言わないよ」みたいな独特の言い回しが古典には山ほどあって、海外翻訳ものだとその数はさらに倍。そんな「古典だから許される無理」を山盛りにしながら、でも表面上はそうと見せない曖昧ワールド。
 チェーホフ全く読んだことない僕でもうっすら知ってるかの有名なシーンが学芸会風イッツアスモールワールドで掻き消されるときに浮かんで消える一瞬の叙情。