ゲシュタルト徘徊

少年王者舘夢十夜(ゆめ たす よる)」
作・演出:天野天街

@下北沢ザ・スズナリ

 「夢を見ているような舞台」を見せてくれる作品は他にいくらでもありますが、こうも鮮やかに「舞台=夢」の等式を証明されちまうと、もはや「ぐうの音も出ません」の音も出ません。メタにメタを重ねると泣ける、という俄には信じがたい事実を突きつけられた気分です。舞台用照明とストロボ映像と客電と作業灯を点けたり消したり点けたり消したり、てんかん発作を起こしそうなほどの目まぐるしい轟光の中で、時間も言葉もアナタもワタシも消し飛んで何もなくなった世界の果ての砂壁に手探りで触れるような感覚。
 なんだかんだ言って今まで控えめなパターンしか見たことなかった珠水さんのデタラメ被り物ジェンヌっぷりを堪能。カーテンコール後の夕沈ダンスは、あれはあれで美しすぎて腰を抜かす。