正三角関係/トリビュート・アルバム

味わい堂々 お味見公演「アジミ祭」
演出:岸野聡子/映像:荒船泰廣(sushi film)
  1. 『アジミ祭』 作:味わい堂々
  2. 『マッチ売りの少女たち』 作:成島秀和(こゆび侍)
  3. 『中日vs女子』 作:佐々木充郭(バジリコ・F・バジオ)
  4. ペプシの神』 作:吉増裕士(リボルブ方式)
  5. 『さよなら味わい堂々』 作:吉田海輝(サンチャゴ)

@北池袋アトリエSENTIO

 まさかの朝公演に滑り込むべく7時起きを敢行。大の大人が仕事もない日の早朝9時から北池袋で芝居見るだなんて荒行、なかなかできることじゃないのですが、そうまでして観に行かせるだけの引力がそこにはある。別にそこで「涙が涸れるほどの感動」があるわけでも「腹がよじれるほどの笑い」があるわけでもなく(結果的にはあったのですが)、はたまた「言葉を失うほど上手な演技」が見れるわけでもなく、そこにあるのは純度の高い「等身大のすげー変な芝居」なのです。けれども、客演なしの三人芝居こそ味わい堂々の真骨頂であり、なぜなら味わい堂々という劇団はおそらくメンバーチェンジが原理的に不可能な集団のひとつだからです。
 劇団員である以前に10年来の友達同士だという仲の良さと、それでいて「ただの仲良し」だけでは終わらない強力な信頼関係は劇団として理想的な姿*1を体現しているし、本当のところ劇団に必要なものなんてそれだけでいいのかもしれないとさえ思わせてくれる。ばらばらの個性だけど集まると無敵。まるで「白米」と「しゃけ」と「味噌汁」のような関係性*2の三人。
 四人の作家が持ち寄ったものは当然のように全く毛色の異なる作品ですが、それらの「お話」の中で水を得た魚みたいにキャッキャと跳ね回る姿から、もらった脚本を骨の髄まで楽しみ尽くしてやろうという本人たちの気概が見えてくると、意味不明の多幸感が一気に客席を包み込んでくる。ほんとは脚本なんかなくて全部エチュードなんです、と言われても信じてしまいそうなパス連携の的確さ。
 早着替えの早着替えによる早着替えのための演劇『中日vs女子』と、タイムマシーンかなんかで45年後の会話を盗み聞きして書き起こしたんじゃないかとさえ思わせる近未来リアリズム演劇『さよなら味わい堂々』が素晴らしすぎた。乙女よごらんあれがPARCOの火だ。

*1:ホームページのリニューアルにあたって消えてしまったけど、岸野さんのプロフィールの「好きな俳優」欄に「浅野千鶴と宮本奈津美」と何の衒いも打算も感じさせない自然さで書かれていたのを見た時の筆舌に尽くしがたい感動!

*2:見ていて唯一似ている例として思い浮かんだのが『やっぱり猫が好き』だった、と言えば伝わるでしょうか。