ピタゴラな人

  • 一部からは「物理の北山」なんていう予備校講師みたいな通り名で呼ばれることもある物理トリック・マエストロによる短編集。しかも物理トリックは他のトリックと違って、条件さえ揃えば誰でも模倣犯になれてしまう(現実で完全犯罪が可能になってしまう)危険なジャンルなのですが、そこはさすがの北山氏、「物理的に可能だけど実行に移すのは不可能といっていいほど面倒」だとか「すべての条件が揃うことは現実的に不可能」だとかの手練手管で、よい子が真似しないための予防線は完璧に張ってあります。作中でさりげなく放たれる「いつまでも針と糸で完全犯罪が済むもんか」は作者のスタンスを示す名言だと思うのですが、どうか。