そろいもそろって

ゲキバカ 「おぼろ」
作・演出:柿ノ木タケヲ

吉祥寺シアター

 前説と前口上、そこから踏み出す数歩で「われわれゲキバカとはこういうものです」と美しい直線で順路を敷いてゆく。ひとを楽しませることに対して手加減がないところが見事です。
 時代劇+SFなんてのは使い古された設定でしょうが、使い古されたということは耐震強度が万全ということで、単純明快にもほどがあるよな勧善懲悪ストーリーは多少好き勝手暴れたくらいじゃビクともしない。
 演劇は割り算なのだな、と唐突に脳天で理解しました。脚本を役者で割ったり、役者を演出で割ったりして、その小数点以下の余りを楽しむものだと。だからこそ、寸分の隙もないダンスのあとに小銭を落とすだけの粗相が妙に切なく面白くなる。どんなに小難しい理屈を捏ねるよりも「うわーめのまえにひとがいるー」ってバカみたいな感想を捨てなかった結果こそが、この劇団名を名乗らせたのだと思うのです。
 余談ですが、僕は大量の紙吹雪を見ると条件反射で泣き出しそうになるのですが、これが感動の涙なのか悲しみの涙なのか、しばし考えたのちにトラウマだってことで落ち着きました。