空洞の夢は犠牲が望み

+1(たすいち) 「夢見る乙女じゃいられない」
作・演出:目崎剛

王子小劇場

 たしか前回公演が11月後半だったから、だいたい稽古期間が1ヶ月としても終わるや否やの初動の素早さ。それも小皿料理的な作品じゃなく、ぎっちり前作を上回る長編仕上げてくるあたり、凄まじいエネルギーだと思うのです。「学生と思えないペースで舞台に参加しつづけ、卒業がいつになるかわからない」という自虐的な自己紹介文が頼もしすぎるじゃないか。
 +1の作品に出てくる人(とくに女性)は基本的に、頭にバカネジが2〜3本刺さってるかマイペースすぎるかのどちらかなんですが、そんな上滑りしたテンションのまま物語が現実へ雪崩れ込んでくる後半の鳥肌は筆舌に尽くしがたいのです。泥酔しながら讃美歌を口ずさむ牧師の運転する2tトラックが鉄柵突き破って墓地に突っ込むのを見ているかのような空恐ろしい感触。オリジナルがパロディーに食い殺されて、その腹を割いてオリジナルが救出され、また食われ、、、、、って無限赤ずきん地獄みたいなことをやってる間に、ここが入れ子構造の中だったか外だったか徐々に自信がなくなってくる。
 登場人物たちのいちいち恥ずかしファンタジックな名前に意味がある*1と気付いてからというもの、良質のミステリーを読むように頭の中はそればかり気にしてしまう。『久遠さりな』のアナグラムが自力で解けた瞬間、衝撃と爆笑が身体中を駆け抜けました。

*1:もしや「オープニング映像曲がesrevnoc」というのも伏線だったのか?