もういいかい/もういないよ

国道五十八号戦線 「バベルノトウ」
作・演出:友寄総市浪

@新宿サンモールスタジオ


 「父親や母親が実は宇宙人かなんかで、僕のいる前でだけ人間の姿をしている」だとか一度でも世界を疑う妄想をしたことがある者(まさか僕だけだとは言わせないぞ)にとって、この作品は危険すぎた。まだ暗転さえ明けきらぬ暗闇の中で発せられた冒頭の台詞で、いきなり消え去る足下の床。あると思って寄りかかった壁も実は書き割りの一枚ベニヤ板で、目の前が暗くなる、なのにサン(息子)もトワ(あなた)もマミー(母)もいないという恐怖。作品の出来不出来を云々よりもまず、このやばい世界観に足を取られないよう理性を保っておくので精一杯でした。
 タイプは違えど匹敵する作品としてとりあえず思いつくのは麻耶雄嵩の『神様ゲーム』ですが、実際、これと同じ話を小説や映画でやられても、ここまでの衝撃は受けなかったような気がするのです。“それ”を演劇で表現されちゃったショックというのはあまりにも大きい。