想像と妄想と創造はどう違うの

劇団ハーベイ・スランフェンバーガーのみる夢 「アポポポポポポキシー・モニカ」
作・演出:荒川大

駒場小空間

 自分内で2010年度『ベスト声に出して言いたい公演タイトル』を観劇前から堂々受賞していた作品。宣伝美術のデザインといい、そこに載ってる「缶吐き男」のエピソードといい、只者じゃないなとは思ってましたが。そういや東大の構内へ足踏み入れるの生まれて初めてかもしれない。
 発する言葉の一つ一つにこちらの想像力を引き出してくる力があって、椅子と竜骨(文字どおりの)以外なんにもない素舞台に次々と世界が生まれてゆくのです。さらに、感情は乗っかってるけどリアルでもない、いわゆる絵本朗読調のような話しぶりとの相乗効果で、いよいよ物語には独特のリズムができあがる。中盤の二人称叙述トリックあたりから一気に襟首つかまれて、あとは最後まで余所見を許さない。展開とか結末とか、うっすらと先読みはできるんだけど常にこちらの予想の2ミリ上を行く手腕には安心して委ねられるのです。
 「本日は劇団ハーベイ・スランフェンバーガーのみる夢、旗揚げ公演『アポポポポポポキシー・モニカ』にご来場いただき...」という超高難度セリフを一度も噛まず、のみならず『ポ』の数も間違えなかった前説の人に惜しみない拍手を。