落ち着きのない子

THE☆メンチカツ成 「ナイフなワイフ」
作・演出:小林義典

王子小劇場

 ここでも何度か書いたかもしれませんが、初めて見る劇団を事前にある程度判定する(観に行くか行かないか決める)ときに僕が最も信頼をおいてるのはネーミングセンスなのです。そこを(僕の好みから)外さない劇団は、内容も(僕の好みから)大きく外れることはない。そんな僕の持論に真っ向から勝負を挑んでいるとしか思えないネーミングの挑発にのせられて劇場へ。なにしろTときてHときてEときて☆とくるのだ。そのうえ「メンチカツ」に「成」くっつけて、めんちかつなりーと読むのだ。どうなってるんだそのセンスは。どうなっちゃうんだ日本は。ただで済むはずがない。
 集中できない人のために作られた気が散る芝居。というより、パンフの挨拶どおり余計なこと考え始めて「ながら見」に突入してからが本領発揮なのかもしれません。没頭することを許さないストーリーから飛び出して四方八方に放射線状に目の前を行き交う無編集状態の支離滅裂、そこから何かを拾うもよし拾わぬもよし。舞台上でしゃべってる人がいるからといって、その人しか見ちゃいけないという法律はない。テレビに慣らされてると忘れてしまいそうになりますが、本当に面白い台詞にはテロップが出ないし、笑いの神はいつだって半分見切れて映り込んでいるのです。
 クロムで培ったのか最初から持ち合わせていたのか、相当むちゃくちゃな論理を正論だけで組み立てて押し通す技術は秀逸でした。