現代高校饒舌体/にうまは?

五反田団 と いわきから来た高校生 「3000年前のかっこいいダンゴムシ
作・演出:前田司郎(五反田団
作・出演:福島県立いわき総合高等学校総合学科 芸術・表現系列(演劇)第6期生

@五反田アトリエヘリコプター

 『学生演劇』とは「学生がやっている演劇」というだけの意味であって、演技や作品の質を揶揄するためにある言葉ではない。学生でも凄いやつは凄いし、学生にしかできない凄い芝居も確かに存在する。そのことを完膚なきまでに証明する傑作でした。
 高校生は感受性のバケモノだ、というのが見終わってすぐに浮かんできた感想。防犯ベルのようにけたたましいおしゃべりの最中も、気まずい無言の絶交の最中も、とにかく常に全身から受け止めきれないほど大量の感情(感覚と情報)を放っている。たとえばそれは伸ばした手のひらの震えだったり、泳がせた視線の微妙な角度だったり、恥ずかしさに身をよじらせて走り去るフォームだったりするんですが、これは多分(そんな人いるのかどうか知らないが)高校生役歴30年以上のベテラン俳優にだって表現不可能にちがいない。とにかく「あのころのあの子たち」にしかできないような、それでいて恐ろしく的確なやり方で『おしばい』の扉をこじ開けてくるのです。栃木から北上してくる全長15kmの巨大節足動物の話も、一向に進まない仮装パレードの会議の行方も、バーベキューの具材も、告白も、彼ら彼女らにとって死活問題という意味では全く同レベル。そうなんだよな、自分が当事者だった頃には思いもしなかったけど高校生って本来無敵なんだよな、と思う。
 そのどさくさに紛れるようにして、ベンツが貯水タンクになり西階段になり単なる段差にもなる前田司郎マジック炸裂。モチーフの本筋への関係無さと男子のふがいなさは史上屈指といえるかも。