ひきでなめでパン

味わい堂々 「ぼくらのアイドル」
作・演出:岸野聡子

@下北沢OFF・OFFシアター

 そんなわけで2回目です。またかよと思うことなかれ。まただよ。
 旗揚げの『母の日』だけは僕は観てないんですが、演出アプローチとして大好きなのは『春を待つ』で、役者が全員あますところなく輝いてたのは断然『宇宙を育てる』だし、ストーリーの好みでいえば『最後の料理人』が一番じゃないかと思うけど、言い切ってしまおうか。ラストシーンの、期待と失望と喜びと悲しみをぐちゃぐちゃにミックスもんじゃ状にしたものを舞台上に3等分して切り分けたアンバランスな構図の美しさは今回が最高だったと。
 アイドルの崩壊とアイドルの再来、暗転直前の一瞬に交差する視線が描く複雑六角関係。僕自身2回目ということで時系列を把握しながら追っていけるとその構成の凄まじさに愕然とするんですが「ほうら、緻密でしょ」ってな押しつけがましさは皆無、というより初見じゃ絶対わからないようにできているし、その緻密さだって説明されてない以上は僕の勝手な深読みかもしれなくて、だったらあれはこういう意味か? とか、ああだこうだ考える余地はいくらでも残されている。帰り道、ずっと噛みしめていても味がなくならないガムのような芝居。