四半時間世界一周

Mrs.fictions 「15Minutes Made vol.8」
出演団体:時間堂/TOKYO PLAYERS COLLECTION/PLAT-formance/国道五十八号戦線/劇団芋屋/Mrs.fictions

@池袋シアターグリーンBOXinBOX Theater

 一貫したコンセプトがあるからとはいえ、溜め息が出そうなほど美しい美術(同語反復)と映像。まるで毛色の異なる6つの短篇時空間を縒り合わせるために用意されたその装置の出来栄えに負けず劣らず、今回ちょっと何事かと思うくらいのトータルバランスに仕上がってます。

  1. 国道五十八号戦線 『さっき終わったはずの世界』
    作・演出:友寄総市浪
     なにかとロマンチでセンチメな雰囲気ただよう、みんなのあこがれワールズエンド物(そんなジャンルあるのか知りませんが)の、ぬるま湯めいたムニャムニャしたまどろみの中から強引に首根っこ掴んで壇上に引きずり上げるような、カーテンコールの準備して深々と頭下げて待ってたらまだシーンの途中だった、みたいな。人間は学習する生き物なので、大切なことは二度目で痛いほど理解する。最後だから口では何とでも言えた二人の、どん詰まりロスタイム悲喜劇。
  2. 劇団芋屋 『てめぇは草食ってろ』
    作・演出:高橋征也
     目の前に転がる出来過ぎた状況と、そこからとめどなく派生してゆく妄想と、それらを最後にひっくり返してなお余りある驚愕の現実と。登場人物が全員ベクトルの違うバカさ加減と憎めなさ加減を発揮していて素敵。
  3. 時間堂 『池袋から日暮里まで』
    作・演出:黒澤世莉
     タイトル通り、池袋から日暮里までの山手線車内スケッチ。かと思いきや徐々に重なりながらズレていく世界。ただのシンクロかもしれないし過去と未来かもしれない、その答えは明かされないまま終わるのですが、このあと休憩時間に入った途端に客席のあちこちから解釈をめぐる会話が聞こえてきて、あ、それこそが「ふつうの、すごい演劇」ってことなんだと気付かされる。
  4. Mrs.fictions 『Yankee Go Home(ヤンキー母星に帰る)』
    作・演出:中嶋康太
     Mrs.fictionsの最終兵器がついに姿を現した、そんな印象すら受けた傑作。さんざん笑わせといてラストシーンのほんの一瞬、ノーヒントじゃ絶対読めない名前の(字面だけじゃ性別もわかんない名前の)梅舟惟永さんが震わせたあの空気に、ごはんつぶが気管に飛び込むみたいな目にも止まらぬ不意打ちで理由もなく涙出そうになった。
  5. PLAT-formance 『R.F.D』
    作・演出:オカヨウヘイ
     見ている間は何の違和感も感じなかったのだけど、このアクロバティックな構成と張りすぎの伏線がたった15分間の出来事だったという驚きが後からじわじわ来る。広々とした舞台上に二人しかいないからこそ可能な、隙のないコンビネーション芸。
  6. TOKYO PLAYERS COLLECTION 『TOKYOが始まる』
    作・演出:上野友之
     僕も地方上京者であり奈良出身なんですが、やっぱり「大仏と鹿のことだけで奈良を語ったつもりになりやがって」と不貞腐れたくなることは時々あるわけですね「どうせお前ら高山あられも竹林園も知らないくせに」って。けれども実際のところ僕らは自己紹介するとき大仏や鹿に頼らざるをえない、それもまた真実。トウキョウで暮らすトウキョウ嫌いのための、ちょっとした処方箋みたいな演劇。そして渋谷のスクランブル交差点を渡る男たちはろくでもないことしか考えてない、それもたぶん真実。