ウィー・アー・ファイン

クロカミショウネン18 「ユー・アー・マイン」
作・演出:野坂実

下北沢駅前劇場

 ひたすら複雑になってゆく展開はまごうかたなきパズルなのに、それを「解きながら観る」という視点を完膚なきまでに奪われる快感。いま誰が誰でとか全部どうでもよくなって、相関図を繋ぐ線を描くシャーペンの芯が折れるほどの勢いで押し寄せる混乱の波にただ乗せられてしまえばいいのだ、と気づいたが最後。ピンチに陥ってる人を見て面白いのはピンチ自体が面白いんじゃなくて、そこから無傷で脱け出そうとするあまりにどんどん危険な回り道へと踏み入ってしまう「人間」の姿が面白いのです。
 シチュエーションコメディの根っこにあるものって結局やっぱり性善説だよな、と改めて思う。冷酷に徹すれば自分だけは簡単に「いちぬけた」できることは多分全員が自覚済みで、だけど哀しいかな愛しいかな、どいつもこいつもお人好しばっかりで、結果そこから生まれるチームプレーの強さは他の追随を許さない。なにより、あの人たちは何も否定することなくそこに立っているんだもの。勘違いも無茶振りも闖入者もすべて受け入れて巻き込んで、巨大な雪だるまと化してフィニッシュを決めるのだ。