自意識あぁ無情

ハイバイ 「ヒッキー・カンクーントルネード」
作・演出:岩井秀人

@五反田アトリエヘリコプター

 僕が観るのも二度目だし、作品としてはすでに5〜6回は再演されているはずなんですが、まるで色褪せないのは岩井さんそのものが作品に宿っているからだと思うのです。面識もないオマエが岩井さんの何を知ってんだと言われようとも、作家本人が実際に引きこもりだったという過去を踏まえてさえいれば、当の引きこもり本人を演じているのが当の岩井さん本人だとかいうシンプルに複雑怪奇な構成からにじみ出てくる独特の湿っぽい笑いからは逃れられまい。
 「空気が読めない」と言われるのを極端に恐れるあまり必死になって空気を読もう読もうとするのだけど、そもそも空気は吸うものであって読むものではないし何も書いてないし目に見えないから読めるはずもなくて、それでも「空気を読め」だなんて誰かに命令されるからには他のみんなには何かが見えているんだろうか、なんて思いながら空気を探し求めて過呼吸気味になる...引きこもるところまで行き着かなかっただけで多かれ少なかれそんな経験をしたことのある者にとっては、舞台上を流れている「自意識と自意識の戦い」がはっきり目に見える瞬間が何度か訪れる。わかっているから言わないとか、わかった上でぶち壊すとか、わかっているのにできないとか。
 それにしても公衆電話の表現力ったら!