山賊のいる教室


 たすいち『あなたのひとみにうつらない』稽古場にお邪魔する。比喩でもなんでもなくお邪魔する。行って、ただ座ってました。あなたのひとみにうつらない、わたしは現場でなにもしない。
 というのも小道具を使うのかどうかが不明で、このまま何も作らずに本番を迎える可能性もあって、そうすると僕は単なる図体のでかい見学者なのであって、そんなのは嫌だってんで自分の出番を探るべく偵察のために稽古を見張る。隙あらば何か作れるチャンスを、隙間を、埋めたいのです。
 ところで、いままで僕が出会った演出家は二つのタイプに分かれます。「座ってる演出」と「動いてる演出」。どっちが良いとか悪いとかじゃないけれど、目崎氏は圧倒的後者でした。ずっと立ちっぱなしで演出をつけ、ダメを出し、ときには自ら動いたり喋ったりしてみせる。あなたのひとみにうつらない、演出席には座らない。
 演出家が演出席に座らないもんだから、なんだか僕が座っている場所が演出席みたいな感じになってて気恥ずかしい一方で、彼の言動、というか言語感覚が僕のそれに近いことに大きな安堵を覚える。何をベタだと思うかだったり、心地良いと感じるセリフのBPMだったり。そこが共有できてるだけで打ち合わせの速度はきっと倍近く変わるはずで、だから僕は早いとこ打ち合わせるべき何かを稽古場からつかみ取らなければいけないと思うのです。いつもながらアナグラム好きにはたまらない配役。目崎ワールドと僕の相性は結構いいはずだ、という根拠のない予感を現実化したい。