700万とグーニーズ

悪い芝居 「らぶドロッドロ人間」
作・演出:山崎彬

王子小劇場

 強烈なエネルギーの作品を観たときはいつも、観ている側は非日常に取り込まれそうで、だけど本当は取り込まれたくなくて、なぜなら非日常はお話の中にしかないし我々は日常に生きてるし明日も仕事があるし、ってんで『この物語はフィクションですのであなたの人生に直接の影響はありません』のテロップが出るのを無意識に待っている。要は芝居を観ている間だけ非日常にいたいのだ、最終的には「いい芝居を観た」という安心感だけ持って日常に帰りたいのだ。
 悪い芝居はそんな安心なんかさせてはくれない。問題は何も解決してないし、地獄の蓋は全開になったままカーテンコールを迎える。だから衝撃は正面からじゃなく背後からやって来る。見終わった今でも後ろ髪を引くように何かが追ってきているような感触が残る。
 耳をつんざく雨音*1の中、赤と緑に光る虫たちが舞台上をざわざわ這いずり回る。光と煙だけが絶対の説得力を持つ空間で、意識みたいに薄れていくシルエットが印象的。

*1:小道具の雨傘が本当にちょっとだけ濡れていたのには驚いた。