反動エンゲキ

国道五十八号戦線 「反重力エンピツ」
作:友寄総市浪/演出:福原冠

@新宿サンモールスタジオ


 カレーパーティーのふりをした学生運動のふりをした、ほかならぬ演劇の話。
 新作「マイグランパズアッシュダイヤモンド」から作者急病による演目変更での再演なんだそうですが、そんな実情は黙ってりゃ分からないくらいの仕上がり、かつ、作品としての文脈とは別に、途中退場せざるをえなかった作家に対する役者からの叱咤激励(台本上の台詞ではなく、役柄に沿ったアドリブでもなく、生身の出演者から生身の作者に向けて発せられた言葉)のように聞こえてくる箇所がいくつかあった。あとから聞くと改稿などは特にしていないしアドリブもほとんどないそうで、するってえと偶然にも作家は自分の参加できない作品に出演している役者の体を通して自分で自分の書いた物語に救われたことになるわけで、そこに思い当たったら涙がばあばあ出てきそうになったのです。
 皆既日蝕を起こしながら焼け焦げていく日の丸の中で静止した幕切れが美しすぎる。