ヒとミとコとリとイとシのアとム

少年王者舘ガラパゴス
作・演出:天野天街

@下北沢ザ・スズナリ

 まず最初に大事なことを言っておくと、ガラパゴスとは少年王者舘そのものを表した言葉だ、ということ。これは決して回りくどい比喩なんかではなく見たまんまの事実。ほかでは見たこともない珍しい生態系が跳梁跋扈し、想像を絶する美しい群舞があり、聞いたこともない懐かしい言語感覚が飛び交い、理屈も批評も圧倒的な「体験」の前に掻き消されてゆく。それに加えて、今回はいつになくポップな仕上がりだった。
 だって誰が予想するだろう、人間が立ったり座ったりする動作だけで腹筋よじ切れるほど笑わされる日が来るなんて。笑いすぎて腹筋ばかりか僧帽筋をも痛めて流した涙の湯気で眼鏡まで曇る。これは並大抵のことではないよ。
 僕が王者舘を初めて目撃してから10年が経とうとしていますが、デジャヴュとノスタルジーマンネリズムをごった煮にしたような「あの感覚」は最近なりを潜め(僕が見慣れてしまっただけなのかもしれませんが)、かわりにどんどん新たなアイデアが溶かし込まれている気がするのです。手段も目的も同じなのに毎回手を替え品を変え、過去と現在と未来をくちゃっと丸めてうどん粉のように捏ねまわしながら、たった90分の中にビッグバンとビッグクランチを3回くらい挟んで世界は唐突に終わる。