郷に入っては業に従え

荒川チョモランマ 「R学級の中心」
作・演出:長田莉奈

@池袋シアターグリーン BASE THEATER

 このタイミングで僕が米澤穂信インシテミル』を読んでいたことは全くの偶然に過ぎないのだけど、奇妙なシンクロを感じて興味は倍増。
 「いじめ」そのものを描くのではなく、いじめの延長、つまりは延焼・二次災害、ひいては発火点についての話。「空気を読む」という言葉が象徴しているように、空気中には酸素があり、火種は酸素と化合し、燃え拡がった炎はコントロールが利かなくなる。可燃性物質を懐に隠し持ったまま、みんなで楽しく笑いあうことが「当たり前」から「手段」に変わり果てた、その後の話。
 ひとりひとりが個性的なキャラクターとして描かれていることが全く別の理由を持ちはじめる後半部分の白熱が「あのゲーム」を下敷きにした完全なエチュードだという演出の采配と、それを完璧にこなす役者の瞬発力が、ただただ末恐ろしい。純粋に褒め言葉として「知り合いだということも忘れて引っぱたきたいほど怒りを覚えた役者」がいた。