メタレベルからアイラーヴュー

ロロ 「ボーイ・ミーツ・ガール」
作・演出:三浦直之

王子小劇場

 いつ割れるとも知れない風船が胸のドキドキと直結していたり、ここは突如として渋谷のスクランブル交差点であったり、ってのとは別に、八百万の神は細部に宿る。それはたぶん三浦氏の意図を離れたところで勝手に炸裂して連鎖反応をくりかえすのです。たとえば空から降る100万枚(ミリオンヒット)のCD−R、劇場の空調にさらされて頼りなくフラフラゆれながら殺人鬼と対峙する黄色い犬。でかでかと舞台に横たわる文字はキリトリセンにも、モールス信号のパルスにも見えた。
 ロロを見るたび感動するのは、誤読を恐れてないであろう三浦氏のスタンスです。直線距離ならすぐにでも伝えられる単純明快な核心に向かって、気が遠くなるほど迂回したルートを全力疾走ですっ飛ばす。その途中には走る者の集中力を殺いだり本来の目的を見失わせる景色がいっぱいあるのに、その『よそ見』を許す寛大さと、『よそ見』した景色までも引っくるめてラストシーンの高鳴りへの助走に変えてしまえる間口の広さ。だから見ているこちら側は自由に想像を巡らせながら、舞台とは関係のないあんなことこんなことを引っ張り出してきて、目の前のそれと繋げてみることができる。なにしろテーマは「ミーツ」なのだし、どこぞの国では人間じゃなくても、いっそ生物ですらなくたって全ての名詞が男性だったり女性だったりするのだし、だったら極論、複数の「なにか」の出会いは50%の確率で『ボーイ・ミーツ・ガール』になりうるのだ。