第二の家/無残の雨

 劇場となるアルスノーヴァの下見に行く。小道具が劇場の機構と絡むことってあまりなく(だってそれは装置扱いだから)、実はこれまでの3年間、一度も行ったことがなかった劇場下見。じゃあ今回なぜそこに参加しているか、ということについては各々察していただくとして、阿佐ヶ谷アルスノーヴァ。寝泊り可能、演出制約ほとんどなし。その自由度の高さと雰囲気に比例してか反比例してか、なかなか手ごわい小屋かもしれませぬ。
 とりあえず僕の今回ほぼ唯一にして最大の障壁ともいえる小道具の実験を実寸で実践。これまでさんざん優柔不断に悩んできましたが、百聞は一見にしかず、の結果には納得。ようやく結論が出て、決断を下す。あとは本番用のソイツの調達を残すのみ。
 実質すべての役者とスタッフが集結した状態だったので、下見帰りに飲んだりもする。実験済ませた安堵からか、リラックスして口数が増える。軽い近況報告から反省会の如き真面目話まで、店内の話題に熱がこもるにつれ、店の外では雨が降る。阿佐ヶ谷から鷺ノ宮までを歩きで帰ろうとする僕に強まる雨足、濡れそぼるダンボール、金魚すくいの網みたいに音もなく破れゆく紙袋、アスファルトに散乱する紙袋の中身。「ほうほうのてい」って、こういう状態なのかしら。