いのちがけの暗闇にて

 初対面の相手が多い(前回比)、こゆび侍の稽古場へ。さすがにもうそろそろ緊張しないで稽古場入りできるようになりたいなとは思うけど、やはり最初の訪問時は深呼吸の一回でもしないとドアひとつ開けられない。心拍あがる。腕も震える。首と背骨が痛む(それはただの不摂生)。それにしても、なんだかんだで6回目か。回数だけなら劇団単位では最長の付き合いになるんじゃなかろうか。
 当たり前ですが、演劇はフィクション。どれほど事実に基づいた話であろうとも、役者が目の前で演じてみせようとも、台本があってセリフが決められてて展開も結末も決まっている時点で、どうしたってそれは嘘っぱちなのです。人は嘘には共感しない。その事実を渋々認めた上で、さて、どうやって嘘を嘘のままにさせないか、どうやって嘘の魔の手から逃げのびるか。そんな目的から自然に編み出されたのであろう「こゆびメソッド」は確かに迫真の演技への最短ルートなのですが、最短ルートにもかかわらず今まで誰も通ってこなかったのにはそれなりの理由があるわけで、必ずしもリターンが保証されていないハイリスクなその方法をあえて選ぶにはかなりの度胸が必要なはず。
 僕も僕で飽きもせず毎回そればかり紹介してますが、その都度アップグレードを繰り返し洗練されていく方法論を間近で見ときながら胸躍らないなんて言うほうが余程嘘臭いし、この手法の完成(それがいつになるのか、どんな形に落ち着くのか)が気にならない振りをするほうが余程難しい。だから臆面もなく言わせてもらいます「期待してます」。まずは好調そうな滑り出しで一安心。