シュトゥルム オア ドラング

  • こゆび侍には時として『脚本が消え失せる』瞬間が訪れます。言い換えるなら、これはフィクションであって舞台上に存在しない第三者(脚本家)が書いたプロットに則って役者が動いたりしゃべったりしているにすぎない、ってことを完全にすっぱり忘れさせられてしまう瞬間。演技が台本からフワッと離陸して、登場人物の体と言葉だけが説得力を宿す瞬間。それが今日、通し稽古で訪れました。これは成島氏が自分の「才能」と「才能の終わり」と「その先」をミックスして俎に乗せて惜し気もなく曝し出した作品だ、と確信するに至る。
  • それにしても、芝居の外側は未曾有の大ピンチだというのに、芝居の内側には一抹の不安もない。なんなんだろうこのアンビバレントな二重構造は。逆パターンなら今まで何度も味わってきたのだけども。
  • 世の中は決して思った通りにはいかない。だから常に最悪の事態が起きることを思い、それに怯えながら暮らせば、「思った通りの最悪の事態」が起こることはありえない。マイナス思考を突き詰めた結果プラス思考として跳ね返す、この倒錯した楽観主義こそが僕の身上なので、今回もそれを信じていきたいと思うのです。考えるな、感じろ、でも勘でやるな、考えろ、でも考えてダメだったらそれ以上はもう考えるな。