カケヒキレスネス


 王子からの帰り道、成島氏から着信あり(ホラー)。何事かと恐る恐る出てみたら、あはははは、他人事のように笑ってしまったよ。
 にしても成島氏、さすが長い付き合いだけあって乗せ方を心得ていらっしゃる。どの角度から斬り込めば僕が断らないか、むしろ身を乗り出してくるか、そりゃもう悔しいくらいに熟知され手の内読まれているのです。というかその演出プラン、作るのが自分だという事実さえ棚に上げていいのなら自ら進んで一票入れたかったくらいだもの。
 電話越しに聞いただけでは夢見心地な話でしたが、取り急ぎ新宿まで呼び出して受け取った台本には「それ」が明確に書かれてあり、一気に現実味を帯びた冷や汗が。「はじめに言葉ありき」とはよく言ったもので、基本的にスタッフというやつはト書き様の御言葉には逆らえません。何度か読み返し、おもむろにコーヒーを飲みほし(本当はコーラでしたが、いいじゃないか少しくらい見栄を張っても!)、僕はどうにか絞り出す声で「がんばります」と呟いたのです。
 まあ、お互い不可能を不可能のままにしておけない性分なので仕方ないのかもしれません。こうなったら見せてもらおうじゃないか、その『×る××』とやらを。