2の月は釣瓶落し


 とても残酷な事に、2月は1月より3日も早く終わりを迎えます。だから本番まではあと3日しかないのですが、まだ3日あるという見方もあります。昼間の気温がぐんぐん上がってゆく中で僕は、閉め切った部屋に暖房をがんがん効かせて加湿器もOFFにして半袖1枚で冷水を飲んでいる。こうでもしないと小道具がなかなか乾燥してくれないのです。ひとまず最大の難所をようやく昨日クリアして、残り3日にしてようやく到達した折り返し地点。ここからのラストスパートは秒速で駆け抜けます駆け抜けてみせます。経験則を信じるなら、今この時点でここにいるなら、いける。
 とは言うものの、それはあくまでスケジュール的な、物理的なお話。精神面はそろそろ結構なレッドゾーンに踏み込みつつあります。稽古場でさも当然のように「そういえば、お面は結局どうなりました?」と尋ねた直後、それが昨夜見た夢の話だったことに気付いて赤面。そんな小道具、いくら台本を捲ってみても出てくる気配すらないというのに。現実と虚構の区別もつかないなんて、バーチャルリアリティ世代め。
 でも多分、それこそが『昆虫大戦争』を取り巻く空気の正体なのかもしれない、と思う。のたうちまわる現実を生け捕りにして、虚構という名のガムテープでぐるぐる巻きにして舞台上へと投げ込んだ、ような世界。こゆび侍は侍ですから接近戦には強い。小さな空間でこそ真価を発揮する太刀筋を、とくとご覧くださいませ。