虫眼鏡の向こう側


 『昆虫大戦争』劇場入りしました。いつも劇場入りすると疲弊しきった身体にも不思議な力がみなぎり、どう考えても不可能に思えた量の残務さえ奇跡的にこなせたりするのですが、そうでなくとも今回の仕込みはいつになくスムーズに進みます。
 昆虫をモチーフに扱うことの多いこゆび侍が満を持して紡ぐインセクト・ファンタジア。人と虫、どちらに照準をあわせて観るかによって妄想にも童話にも神話にもなる、実に奇妙なテイストの作品に仕上がってきました。何より3年振りに役者として立つ成島氏に対して、不安30%・期待100%という計算が合わない気持ちでいっぱいですが、『真夏の夜の蛇腹姫』然り『裸のキャンドル』然り、彼が劇世界に介入することには特別な意味があるのです。もしかしたらそれは僕の勝手な深読みかもしれないのだけど。
 それと小道具。久しぶりに「寝食を忘れる」より一つ上の段階、「寝食を奪われる」へと辿り着いた結果がこれだ! と、早く言いたい。にしても、何ちゅう物作っちゃったんだろうか。出演者と同じ個数の、出演者と対等に張り合えそうな体積の、それ。場当たりの合間にふと視線を向けた舞台上の異様さったらない。