瞬間移動はできません


 杉並区某所にある「小道具の聖地」にて買い出ししてから稽古場へ。ここに来るたび驚かされるのだけど、そろそろ職人芸の域にまで達したどんぶり勘定。少なくとも「この箱の中すべて400円」の箱から1つ、「すべて100円」の箱から3つ品物を取り出して、あといくつか付け足して合計600円だなんて計算は僕の知りうる四則演算を総動員しても叩き出せないマジックナンバー
 脚本と演出を一人の人間が兼任している場合、たいていは脚本書く時点で無意識のうちに演出にリミッターがかかるといわれています。こんなシーン作りたいけど予算的に厳しいとか、こうなったらカッコイイけど物理的に無理とか。ところが三浦氏にそういったリミッターは備わっていない。戯曲というのは本来、必ずしも上演を前提に書かれたものではないらしいですが、つまりロロの台本とはホンモノの戯曲なのですね。
 そんな台本を劇作家・三浦直之から受け取った演出家・三浦直之が、今度はその上演不可能な台本を復元不可能なほど粉砕して、その破片を並べ替えながら上演可能な形に仕上げてゆく。そこにスタッフ的な心配事がないわけではないけれど、この得体の知れない面白さの前にはそんな心配など無力です。稽古場来るたびに泣くほど笑っちゃうなんて我ながらちょっと異常だわ。