オープニュアイズ クロージョライズ


 目崎剛は「天才」ではないし「自信家」でもない。それは稽古をちょっと見ればわかる。どちらかといえば「ナイーブな努力家」という言葉がよく似合う、これからの人である。そして、それだけで充分ついて行く価値はある。地道な努力が必ず実を結ぶとは限らないことくらい(大人ですもの)知っているつもりですが、安定期とか円熟期に入った表現に物足りなさを感じてる僕としては「迷い」の要素を持った演出家のそばで一緒になって、あーでもないこーでもないと世界を微調整する仕事はとても魅力的。
 たすいちの芝居は時々とてもまぶしい。二言目にはアートだ実験だ前衛だと偏りがちな現代に、それでも「ベタなファンタジー」を貫こうとしながら/でもやっぱりアートじゃないのって恥ずかしい/でもやっぱりエンターテイメントやりたい/という現代的ジレンマに翻弄されながら模索をくりかえす態度には、僕だって恥ずかしながら少しばかり目頭熱くなったりすることもあるんです。ブレることなくブレ続け、迷うことなく迷い続けてほしくて、そして他の同世代の天才よりも遠回りしたぶん多くの景色を見せてほしい。彼にはそれができるはず。これはきっと褒めすぎでも期待しすぎでもないよ。プレッシャーではあるだろうけど。
 明日から幕が開きます。どうしましょ。そうそう、過去公演のDVDと今回の上演台本を販売するそうです。上演台本はNichecraft出版部門『NC文庫』が装丁しました。タイトルにちなんだ仕掛け満載で完全限定生産、(世界に)20部しかありません。どうかどうぞ。