ダイジェスト+1


 初日:熊川ふみ(範宙遊泳)さんの身に降りかかったハプニング、その切り返しの見事さに舌を巻く。「失敗を笑いに転化して切り抜ける」ことさえできないシリアスなシーンでの、あまりに高度なアドリブ綱渡りに素直に感動して本人に話しかけたところ「どあああばかばかばか!」と猛りながらグルグルパンチで左肩どつきまわされ、なかなか本気でじんじん痛かった。
 二日目:小道具が破損。「もうー」と言いながらも僕の表情筋は弛緩。こうして修理してる間だけは確実に「小道具さん」でいられるからです。それ以外はただの「なんか知らんけど毎日劇場にいる人」でしかないので。
 三日目:劇場行きはお休み。何事もないことを祈りながら(実際なかった)歯医者に行き、そして夜はこゆび侍の顔合わせに行く。またしても「こゆび侍の母です」的な紹介をされて赤面。顔合わせにお母さん連れて来ちゃったら気まずいでしょうよ。そんなことよりワタシ未婚男性ですってば。
 上演台本が好調に売れているらしいと風の噂で知る。いくら装丁がしっかりしていても結局作品に満足してなけりゃ人は台本なんて買わないと思うので、この現象は実によろこばしい。
 楽日:昼夜とも満員、特に夜は魔法がかかったみたいに大化け。きわめて純度の高い+1エンターテイメントの完成形を目の当たりにする。
 と、そんなふうにして気がつけば4日経って終わってました、たすいち『あなたのひとみにうつらない』。公演矢のごとしとはよくぞ言ったものです(言ってない)。この現場に携われて色々紆余曲折を言い出せばキリがないけれど、基本的には幸せでしたよ。